冬の朝、布団の誘惑
朝の六時、窓の外はまだ夜の名残を深く湛えている。ぽっかりと夜のような空に浮かぶ月は、まるで時の針が止まっているかのようだ。これを「朝」と呼ぶには無理がある。体は冷えた室内にあり、ただただ布団の暖かさが恋しい。
暖房が本格的に動き出すまでの時間を利用して家事を片付けたいという理性とは裏腹に、この暗さの中ではどうにも眠気が消えてくれない。時間は容赦なく過ぎ、やがて仕事の時間も来てしまう。できる限りのことは済ませておきたい――
そう強く思う心とは裏腹に、月を見上げながら、もうほんの少しだけ、自分の体温で温まった布団の中に潜り込みたくなる。
朝が遅くなったなぁ。
最近は夜の雰囲気を残したままの冷たい外の世界を見ていると、どうしようもなく柔らかな布団の温もりが愛おしい。冬は夜が長く、その分、一日の始まりに取り組むのも遅くなってしまう。
これは全く自分のせいなのだけれど、長くなった夜を過ごす中で、改めて冬という季節を感じる。
寒さが体に沁みる。まだこれから寒さは増していくのに、もうすでに限界を感じている自分がいる。それほど寒がりではなかったはずなのに、と首を傾げながら、あの夏の焦げるような暑さを思い出そうとしてみる。十月後半はまだ暑かった。
そう考えると、今は実は心地よい季節なのかもしれない、とも思える。
肌寒い部屋で、足元には湯たんぽのじんわりとした温かさ。そして、この柔らかい布団に包まれる瞬間――これ以上の最高の時間があるだろうか。
そうこうしているうちに、外の景色がわずかに色を変え始めた。だんだんと空が明るくなってくる。六時三十分には、ようやく「ちゃんとした朝」がやってくるだろう。
それまでのあと少しの時間、やはりこの暖かい場所に戻りたい。
「ちょっとだけ家の事をしてから…」という気持ちを胸に、今日もまた、ぬくぬくと温かい布団の中へ。
朝の暗さを、最高の「言い訳」にして。
