海外小説『アテナ・クラブシリーズ』の世界へ。作品紹介と感想
皆さん、〈アテナ・クラブ〉という名の、ちょっと変わったクラブをご存知ですか?
これは、海外小説『アテナ・クラブシリーズ』の作中に登場する、個性豊かな“モンスター娘たち”の集団なんです。彼女たちが持つ有り余るほどの行動力で、次々と降りかかる謎に果敢に挑んでいく様子は、読んでいるこちらが思わずハラハラしてしまうほど!
海外小説でありながら、独特な言い回しが少なく、まるでアクション映画を見ているかのように物語へスッと入り込めるのが魅力。もし映像化されたら…なんて想像しながら読み進めるのも、この作品の醍醐味になりました。
あなたも好奇心とスリルに満ちた彼女たちの冒険に飛び込んでみませんか?
メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち

著者 シオドラ・ゴス 訳者 鈴木潤・他 出版社 早川書房
総ページ数 478ページ
あらすじ
ヴィクトリア朝、ロンドン。
父に続いて母を亡くした令嬢メアリ・ジキルは、母が「ハイド」と言う人物に毎月送金をしていたことを知る。
ハイドというのは殺人容疑で追われているあの不気味な男のことだろうか?メアリは名探偵シャーロック・ホームズと相棒ワトスンの力を借りて探り始めるが、背後には謎の集団〈錬金術師協会〉の企みがあった。
調査するうちメアリが出会ったのは、ハイドの娘、ラパチーニの娘、モロー博士の娘、フランケンシュタインの娘といった”モンスター娘”たち。
彼女たちは力をあわせ、謎を解き明かすことができるのか?さまざまな古典名作を下敷きに、一癖も二癖もある令嬢たちの冒険を描くローカス賞受賞作。
登場人物
メアリ・ジキル・・・・ロンドンに住む令嬢。父はヘンリー・ジキル博士
ダイアナ・ハイド・・・・身よりのない少女。父はエドワード・ハイド
ベアトリーチェ・ラパチーニ・・・・〈毒をもつ娘〉。父はジャコモ・ラパチーニ
キャサリン・モロー・・・・〈猫娘〉。父はモロー博士
ジュスティーヌ・フランケンシュタイン・・・・〈アダム・フランケンシュタインの花嫁〉。父はヴィクター・フランケンシュタイン
ミセス・プール・・・・・ジキル家の家政婦
アリス・・・・・ジキル家のメイド
シャーロック・ホームズ・・・・ロンドンの名探偵
ドクター・ワトスン・・・・ホームズの相棒
レンフィールド・・・・パーフリート精神科病院の患者
セワード・・・・パーフリート精神科病院の院長
エドワード・プランディック・・・・科学者
{読了後のこころのうち}
まず、表紙がかわいいですよね。それに加えて1ページの密度の濃さ。
1ページが上下に分かれていて、読みごたえがあるのに総ページ数も478ページと厚めです。この作品は、独特の掛け合いがあってそこも面白くて案外読みやすく感じます。
ただ、文章の絶対値が多いので本を読む習慣がない方にはオススメできません。
海外小説としては読みやすい翻訳なので、読書に慣れている方にはオススメです。
メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行Iウィーン篇

著者 シオドラ・ゴス 訳者 原島文世 出版社 早川書房
総ページ数 445ページ
あらすじ
ヴィクトリア朝ロンドンで暮らすメアリ・ジキルら”モンスター娘”こと〈アテナ・クラブ〉の令嬢たちのもとに、ウィーンから手紙が届いた。
ルシンダ・ヴァン・ヘルシングと名乗るその差出人は、父親のヴァン・ヘルシング教授が行う実験の被験者にされた自分を救い出してほしいという。
背後に、〈錬金術師協会〉に属する自分たちの父親の陰謀を嗅ぎ取った〈アテナ・クラブ〉の面々は、メアリの雇い主である探偵シャーロック・ホームズの力も借りながら、ルシンダを救うため一路ウィーンを目指すことに。
ヨーロッパ大陸で繰り広げられる大冒険を描く、ローカス賞受賞続編にしてシリーズ3部作の第二部前篇。
登場人物
〈アテナ・クラブ〉
メアリ・ジキル・・・ロンドンに住む令嬢。父はヘンリー・ジキル博士
ダイアナ・ハイド・・・・メアリの異母妹。父エドワード・ハイド
ベアトリーチェ・ラパチーニ・・・・〈毒をもつ娘〉。父はジャコモ・ラパチーニ
キャサリン・モロー・・・・〈猫娘〉。父はモロー博士
ジュスティーヌ・フランケンシュタイン・・・・〈アダム・フランケンシュタインの花嫁〉。父はヴィクター・フランケンシュタイン
ミセス・プール・・・・・ジキル家の家政婦
アリス・・・・・ジキル家のメイド
シャーロック・ホームズ・・・・ロンドンの名探偵
ドクター・ワトスン・・・・・ホームズの相棒
アイリーン・ノートン・・・・ホームズの知人
ルシンダ・ヴァン・ヘルシング・・・・大学教授エイブラハム・ヴァン・ヘルシングの娘
ヴィルヘルミナ・マリー・・・・メアリのもと家庭教師
{読了後のこころのうち}
一巻の終わりに届いた手紙を手にヨーロッパへ旅をすることになるメアリたち。
他にも”モンスター”にさせられてしまった子が助けを求めているのにじっとしてられない。そんな想いを胸に現実では、現金が足らず旅費を捻出するのも頭痛の種になるほど。
お金がなくて旅費が出せないなんて親近感が湧きました。状況は違うにせよ、生活するにも謎を解くにもお金が必要になる。
メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行Ⅱブダペスト篇

著者 シオドラ・ゴス 訳者 原島文世 出版社 早川書房
総ページ数 371ページ
あらすじ
父親ヴァン・ヘルシング教授によって囚われの身となった令嬢ルシンダから助けてほしいという手紙を受け取り、ウィーンまでやってきたメアリ・ジキルら〈アテナ・クラブ〉の令嬢たち。
みごとルシンダを救出したものの、メアリの父親であるマッド・サイエンティストのジキル博士により、いわくありげなシュタイアーマルクの古城に囚われてしまう。
〈錬金術師協会〉に属するジキルやヴァン・ヘルシングには、ルシンダを使って是が非でも実現したい野望があったのだ・・・・・。メアリたちは脱出し、父親たちの野望を打ち砕くことができるのか。
ヨーロッパ大陸での大冒険を描く、シリーズ3部作の第二部堂々の完結篇。
登場人物
〈アテナ・クラブ〉
メアリ・ジキル・・・ロンドンに住む令嬢。父はヘンリー・ジキル博士
ダイアナ・ハイド・・・・メアリの異母妹。父はエドワード・ハイド
ベアトリーチェ・ラパチーニ・・・・〈毒をもつ娘〉。父はジャコモ・ラパチーニ
キャサリン・モロー・・・・〈猫娘〉。父はモロー博士
ジュスティーヌ・フランケンシュタイン・・・・〈アダム・フランケンシュタインの花嫁〉。父はヴィクター・フランケンシュタイン
ミセス・プール・・・・ジキル家の家政婦
アリス・・・・ジキル家のメイド
シャーロック・ホームズ・・・・ロンドンの名探偵
ドクター・ワトスン・・・・・ホームズの相棒
アイリーン・ノートン・・・・ホームズの知人
ルシンダ・ヴァン・ヘルシング・・・・大学教授エイブラハム・ヴァン・ヘルシングの娘
カーミラ・カルンスタイン・・・・カルンスタイン女伯爵
ローラ・ジェニングス・・・・カーミラの恋人
ウィルヘルミナ・マリー・・・・メアリのもと家庭教師
ヴラディミール・アールパード・イシュトヴァーン・・・・伯爵
{読了後のこころのうち}
アイリーン・アドラーといえばシャーロック・ホームズとドクター・ワトスンと並ぶ有名人ですよね。この作品にも前篇にもアイリーン・ノートンとして出てきているのですが、秘密のある女性はミステリアスで魅惑的。
私の中のかっこいい女性像なんですよね。なんでもそつなくこなす様子やまんべんなく周りに気を配れる人でいくつもの秘密があるなんて素敵。
メアリ・ジキルと囚われのシャーロック・ホームズ

著者 シオドラ・ゴス 訳者 鈴木潤 出版社 早川書房
総ページ数 534ページ
あらすじ
ヨーロッパ大陸での大冒険から帰還したメアリ・ジキルら”モンスター娘”こと〈アテナ・クラブ〉の令嬢たち。
ロンドンで彼女たちを待ち受けていたのは、メアリの雇い主である探偵シャーロック・ホームズと〈アテナ・クラブ〉のメイドのアリスが忽然と姿を消したというしらせだった。メアリたちはさっそくふたりの行方を捜すことに。
そのころホームズ・はアリスとともに宿敵モリアーティに囚われていた。モリアーティの一味はホームズを生贄にして大地の力を操る古代エジプトの女王を復活させ、大英帝国の征服を企てていたのだ・・・・・!
古典名作をもとにしたSFミステリ3部作完結篇。
登場人物
〈アテナ・クラブ〉
メアリ・ジキル・・・・ロンドンに住む令嬢。父はヘンリー・ジキル博士
ダイアナ・ハイド・・・・メアリの異母妹。父はエドワード・ハイド
ベアトリーチェ・ラパチーニ・・・・〈毒をもつ娘〉。父はジャコモ・ラパチーニ
キャサリン・モロー・・・・〈猫娘〉。父はモロー博士
ジュスティーヌ・フランケンシュタイン・・・・〈アダム・フランケンシュタインの花嫁〉。父はヴィクター・フランケンシュタイン
ルシンダ・ヴァン・ヘルシング・・・・吸血鬼。父はエイブラハム・ヴァン・ヘルシング
アリス・・・・ジキル家のメイド
ミセス・プール・・・・ジキル家の家政婦
シャーロック・ホームズ・・・・ロンドンの名探偵
ドクター・ワトスン・・・・ホームズの相棒
アッシャ・・・・・錬金術師協会の会長。もとイシスの女祭司
マーガレット・トレローニー・・・・エジプト学者の娘
ヘレン・レイモンド・・・・もと聖マグダレン協会院長
モリアーティ・・・・ホームズの宿敵
テラ・・・・・かつてのエジプトの女王
{読了後のこころのうち}
やっとルシンダを救出して帰ってきた矢先、メイドのアリスやホームズが消えたなんて聞かれたら落ち着いてなんていられませんよね。
ここまでみんなの能力を最大限に活かしてきたメアリたち。アリスとホームズを探すために情報を集め新たな真実へ。ここまで色々な謎と向き合ってきた彼女たちの行動力や連携なども見所の一つです。
最後に
『アテナ・クラブ』シリーズの大きな特徴は、なんといってもその独特な構成にあります。最近では珍しい、ページが上下に分かれたフォーマットで全編が綴られているのです。
この構成により、1ページあたりの情報密度が格段に高く、読み応えがあります。SFミステリ好きを自認する方には、ぜひ読んでもらいたい!
また、〈アテナ・クラブ〉のメンバーたちが織りなす「執筆中のユーモラスな掛け合い」も、他の小説には見られないこのシリーズならではの魅力的な要素です。物語の舞台裏を想像しながら、彼女たちの楽しそうなやり取りに思いを馳せるのもまた一興。
厚みのある読書体験を求めている方も、新しいタイプのSFミステリを探している方も、このシリーズで刺激的な冒険をお楽しみください。
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