エッセイ

【肌寒い季節の至福のひととき】小さな灯りと香りの儀式

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私が数年前に出会った「ある陶器の小さな家」と「お香」がもたらしてくれる、ささやかながらも至福のひととき

残暑が遠ざかり、涼しいと呼べる時間はあっという間に過ぎ去った。

気づけば、暖房に手を伸ばすか悩むほどの肌寒い季節。

そんな私を待ち構えていたかのように、陶器の小さな家が静かに佇んでいる。

二、三年前、その可愛らしい姿に一目惚れして手に入れたキャンドルホルダーだ。

開け放たれた窓から漏れる温かな光の揺らぎは、想像した通りの美しさで、冷えた部屋にささやかなぬくもりを灯してくれる。

人は、本能的に炎の揺らぎに惹かれ、そこに深いリラックス効果を見出すというが、まさにこの窓から漏れる光こそ、その力を最大限に発揮している。

私の頭の中は、いつだって休むことなく動き続けている。

重要な提出物の期限から、今夜の夕食の味付けが初めてにしては上出来だったという些細な記憶まで、意志とは無関係に思考は目まぐるしく回転する。

その騒がしい内側の世界を、ふと静寂へと誘ってくれる気がして、私はこの小さな家に明かりを灯す。

そして、お気に入りの香を焚くのを忘れない。百円均一で揃えたお香立ては、安価ながらも案外気に入っている。

それでも多種多様なそれを揃えたくなる衝動にかられてしまう。

収集癖という私の抗えない悪癖だが、厳選した好みの香はそれなりの値段がする。

だからこそ、毎日の衝動を抑え、特別な儀式として大切に火を灯す。

小さな家から漏れる揺らめく灯りを見つめ、好みの香りに包まれながら飲む一杯は、まさに至福の時間である。

この瞬間ばかりは、時間も仕事も、頭を悩ませる思考も、すべてが意識から遠のいていく。

ただひたすら静寂に身を浸す。

十五分かそこらでお香が終わり、残り香をゆっくりと楽しむ頃には、心は深く落ち着いている。

私には、この短く濃密な時間の使い方が、どうやら合っているらしい。

まだ暖房は使わず、あえてブランケットに身を包みながら暖をとる。

肌寒い部屋のなかで、揺れる光に照らされ、大好きな香りに気持ちを鎮める。

きっと、そんな情景の中にいる自分自身にも、少しばかり酔いしれているのだろう。

この心地よい気分に乗せて、別のお香を焚きつつ本を手に取る。

読書もまた捗るから、すでに忘れた時間をさらに遠くへと押しやってくれる。

手に取ったのは、ジャスミンのような甘いフローラルの中に爽やかさがある香りだが、次は気分を変えて、桜や甘く深みのある白檀を試してみようか。

その日の気分や、読書の内容に合わせてお香を選ぶ時間もまた、この贅沢なひとときを彩るささやかな楽しみの一つになってきている。

夏の涼しい部屋も魅力的だが、私はこの、少し肌寒い部屋で毛布やブランケットに包まれ、ささやかな灯りと香りに心身を委ねる時間が、何よりも好きなのだ。

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プロフィール
ぽりぽり
ぽりぽり
駆け出しブロガー
愛知県生まれ。 新しい事を始めたくてブログに挑戦中。 好きな事を中心に記事を更新していきます。
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